オーディオ フィクション アトリエ

シナリオライター(たまご) 入江玄〈金曜日に更新〉

ネットで「朗読」を体験してみた

 インターネットを利用して、無料の朗読を体験してみました。アナウンサーさんや声優さんによる、文芸作品の朗読です。

 文芸作品、なかでも文豪クラスの作品を読めば、人生のプラスになるかも。その気になれば図書館や、青空文庫で簡単に読むことができます。

 文豪さまの文芸作品、よみます? 面倒ですよね。なら読んでもらいませんか、プロに。

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 子どもの頃、絵本を読んでもらいましたよね? オトナになっても読んでもらいましょうよ。聴くスタイルは自由です。料理を作りながらとか、洗濯物を干しながらとか、ウォーキングしながらでも平気です。(個人的には、夜、体操しながら聴くとぐっすり眠れます)

 

 使わせてもらったのは、「耳で聴く本 きく本」さんと「You Tube」さんです。

 作品は、有名だけどあまり読まれていない(?)横光利一『蝿』と、教科書にも載っていた(勘違い?)宮沢賢治注文の多い料理店』です。

 馴染みのない作品と、何度か読んだことがある作品にしてみました(個人的にですが)。

 無料で楽しめます!

 

横光利一『蝿』、「耳で聴く本 きく本」朗読:奈波果林

https://kikubon.jp/product.php?aKey=571

 

宮沢賢治注文の多い料理店』、「You Tube」(ダ・ヴィンチ放送部)朗読:下野紘

https://youtu.be/jxt4oreeL1o

 

本で確認する「俯瞰」と「主観」

 朗読を楽しんだあとに、文字を読むと違和感があって面白いです。耳で聞いた物語と、目から読んだ物語では微妙に違った作品になってしまうようです。

 そもそも両者には違いがあります。読書は行間を味わったり、読み飛ばしたりできます。

 それに対して朗読は一方通行で、話者のさじ加減による部分が大きいのかもしれません。早送りや倍速で聴くことはできますが。

 おそろく、ですが…。読書が俯瞰のイメージだとすると、朗読は主観に近いのではないかと。全体を理解できる読書に対して、朗読は体験になって行く気がします。

横光利一「蝿」ストーリー説明の前に

 正直に申し上げて、この物語、一度では理解できませんでした(わたしのせい?)。ですので、ストーリーを予め書いておきます。

 ですが、これだけ読まれても「なんのこっちゃ」かもしれません。とても短い物語なのに、キャラクターが多いんです。農婦①、若い男女②③、母に手をひかれる男の子④⑤、田舎紳士⑥、そして蝿⑦(?)です。さらに御者⑧に御者の将棋相手⑨、饅頭屋さん⑩もいます。

 さらに、章が10もあります。超短編であるイメージをお伝えするために感覚で話しますが、1章の朗読に1分くらいでしょうか。とにかく短いんです。

『蝿』ストーリー

 では、いきます。※ネタバレがあります

1、真夏の宿場。馬の背中に一匹の蝿。

2、御者は店先で将棋を指している。

3、宿場へ駆け込んで来た農婦。街に勤める息子が危篤らしい。馬車に乗りたいが、今出たところ。御者が将棋を指しながら、二番がでると教えてくれる。

4、若い男女が馬車屋をめざし歩いている。誰かから逃げているらしい。

5、母に手をひかれる男の子、宿場の馬をみている。馬車にのる気らしい。

6、馬車を利用するため田舎紳士が宿場に到着。馬車がでないと話しかけてくる農婦。二時間も待っているという。御者は将棋盤を枕に仰向けになり、饅頭が蒸されるのを待っている。

7、馬車がでる時間がわからない。ハッキリしているのは、蒸し上がった饅頭は一番に御者が手をつける、ということだけ。

8、かまどから湯気がでて、饅頭ができそうだ。御者は出発の準備を始めた。

9、馬車に乗り込むお客たちと蝿。出発。

10、馬車内、歓談する乗客たち。御者は饅頭を食べ、居眠り。崖道にきしむ音。蝿だけがそれに気づく。蝿は御者や馬をなめるが、起こすことはできない。崖の頂上で最悪の事故発生。人馬の悲鳴。蝿は青空を飛んでいった。

脳内で違いアリ

 「注文の多い料理店」の概略はご存知かと思います。ですが、下野紘さんの「注文の多い料理店」はまた別物。もちろん同じ内容ですが、微妙に違う印象をうけます。

 落語で、同じ演目を別の落語家さんがやるだけで別物になることありますよね。お客の脳内に再現させるスキルに違いがあるからかもしれません。

 私は下野紘さんの朗読で、「ダークな怖さ」を感じました。字で読んだときは「ああ、はいはい、怖いよね~」とポップな怖さだったのです。ですが、音で聴くと、喰われるかもしれない恐怖を感じることができます(個人の感想です)。

おすすめ

 「蝿」を朗読された奈波果林さん、下野紘さんと違い、淡々と朗読されます。だからこそ、怖さが伝わるタイプです。どちらが優れているということはありません。

 あえていうと、ウォーキングしながらおすすめなのは、奈波果林さん。で、料理をしながらおすすめなのが、下野紘さんです。