オーディオ フィクション アトリエ

〈火曜日に更新〉文責:入江玄

名作オーディオドラマの戯曲を分析

続・シナリオを変えてはいけない? 『ラヂオの時間』から学ぶシナリオ術!

前回の冒頭、シナリオライターは「筋を変えられることに、異常にこだわる」という偏見があるが、実際は違うと指摘した。様々なシナリオライターさんへのインタビューを読むと、「変えてもらっていいんですよ」と答えていることがある。作品がよくなるならそ…

「羽州ぼろ鳶組 菩薩花」が最高に燃える理由をさぐる (後編)

先週の続きです。 燃えるポイントを原作小説とオーディオドラマから比較しています。 (参考資料は、文末にあります) 菩薩花 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 作者:今村翔吾 祥伝社 Amazon 思わず立ち上がってしまうシーン ・オーディオドラマ版 8回(*2) 産気づ…

「羽州ぼろ鳶組 菩薩花」が最高に燃える理由をさぐる (前編)

今回は「ぼろ鳶組」を取り上げます! ※ネタバレ満載ですので、気をつけてください。 中国の「水滸伝」、アメリカの「アベンジャーズ」、そして日本は「#羽州ぼろ鳶組」だ!!『#菩薩花 羽州ぼろ鳶組』最高に面白いっす。毎晩燃えてます。ありがとうNHK! htt…

FMシアター『夫婦円満』を分析 (平成12年度文化庁芸術祭参加作品)

熟年夫婦の離婚危機を描いたラジオドラマ。とんでもない二人のお芝居! (ちょい役で、おかけんた氏もでてますが) 夫役が八月に亡くなられた笑福亭仁鶴師匠! 妻役は市原悦子!!(市原さんも2019年に亡くなられたんですよね)。本作は手持ちの録音だが、21年前…

清水邦夫に学ぶ自伝ドラマの作り方『海へ…』

ヘミングウェイって、どんな印象がありますか? アメリカのノーベル文学賞作家で、猟銃を持って日に焼け、ひげを生やしているおじさん。そんなイメージですか? 10月のEテレ「100分de名著」で取り上げられたヘミングウェイの「老人と海」。そのスピンオ…

青春アドベンチャーの傑作「人工心臓」を分析

江戸川乱歩を見出し、日本初の純SF小説『人工心臓』(大正15年発表)を書いた小酒井不木(こさかいふぼく)。失礼ながら、聞かないお名前ですよね。 彼の書いた小説世界を舞台にした奇妙なラジオドラマ、青春アドベンチャー傑作回の分析です。 人工心臓 作者…

竹内日出男のラジオドラマ『流れて遠き』を分析

竹内 日出男 氏は、「中学生日記」などのシナリオ執筆で有名。また、東大卒のエリートで、長年(協)日本脚本家連盟と(社)日本放送作家協会の理事を歴任された、とにかく偉大な先生らしいです(Wikipediaによると)。 牡丹の花 テーマは介護 今回の物語『…

大林清のラジオドラマ『竜馬を斬った男』を分析

どうしてタイトルにネタバレを書くんでしょうか。たまにありますよね「粛清」や「新王誕生」、「砕かれし者」など(『ゲーム・オブ・スローンズ』より)。いやそりゃ、殺されるわな、王も生まれるわな、と。 本作も竜馬を斬った男がいるわけですよね。実質三…

最近のFMシアターで1番の名作『ワンさんは働き者』

「FMシアター」をご存知だろうか。音声で体験する映画と言ったところだ。NHK-FMで土曜夜10時~50分間放送されている。 たまに映画を超える体験をさせてくれる超名作が現れる。残念なのは、一週間の聞き逃し配信のあとは、この世から消えてしまうことだ。もっ…

高垣葵のラジオドラマ『エウ・ソウ・ジャポネーズ ――私は、日本人』を分析

絶望的なまでの方向オンチだ。ナビの指示通りに走っているつもりが、出鼻でそっちじゃないと再設定されてしまう。 だからかもしれない。旅をする物語、とくにバディものがすきだ。一人旅は観てるだけで不安になる。今回はそんな安心のバディものをご紹介。 …

ラジオドラマ『シュナの旅』はイマイチか?

ラジオドラマ『シュナの旅』の原案はあの宮崎駿!(『風の谷のナウシカ』から2年後の放送)ラジオドラマ史にのこる事件、なんと世界初の「サラウンド・ラジオドラマ」なのだ。 シュナの旅 (アニメージュ文庫) 作者:宮崎 駿 Tokuma Shoten/Tsai Fong Books A…

寺山修司のラジオドラマ 立体叙事詩劇『まんだら』レビュー

あの寺山修司が、ラジオドラマを書いていた! しかも、類例をみない世界観のやつを!! 今回は、順をおって(引用多めで)レビューしてみます。※引用はすべて 寺山修司「まんだら」『現代日本ラジオドラマ集成』沖積舎、1989 より 作品の解説で、寺山修司が…

茂木草介のラジオドラマ『踏切の目』レビュー

ストーリー かつて踏切の遮断機を動かし、交通指導をする仕事(踏切警手)があった。主人公の村木重兵衛はそのひとり。ある日、重兵衛の踏切で事故がおこる。 一人が車に跳ねられ死亡、列車と車もぶつかった。警察署は喧々囂々。踏切が降りてから車が侵入し…

谷川俊太郎のラジオドラマ「十円玉」(1963)をレビュー

あの谷川俊太郎が、ラジオドラマを書いていた! 聞いたあとの気分は、村上春樹のエッセイを読み終わった感じと似ています(粗筋だけでも楽しめます)。ラジオの面白さや、最近話題の音声SNSについても考えます。 …五円玉なんですけどね ストーリー 都市の雑…

西澤實「タイタニックの悲劇」のレビュー

1912年わが明治45年4月北大西洋に沈みまして、死者1503名という空前の惨事を海難史上にとどめました巨船タイタニック遭難を取上げました、西澤實、作並びに構成『タイタニックの悲劇』。 ※記事内の引用部分は全て、西澤實「タイタニックの悲劇」『現代日本ラ…

阿木翁助『夜の河』レビュー

脚本を読んだだけでアガサ・クリスティ並に面白い。 阿木翁助『夜の河』の見事さは、構成からもわかる。物語を追う形でレビューしてみたい。(※引用はすべて、阿木翁助「夜の河」『現代日本ラジオドラマ集成』沖積舎、1989) 1、「西山さんの話」 夜中に事件…

飯沢匡「数寄屋橋の蜃気楼」レビューっぽいエッセイみたいな

エッセイみたいな 町で警察官に声をかけられた。「もしもし君はそこで何をしてるんですか」 初めてだ、こんなふうに声をかけられたのは。公道の脇で何をしているのか、即答できない状態にいた。「困りますね。今このお嬢さんが訴えられたんですがね」 「君は…

真船豊「佛法僧」のレビュー

ストーリー 戦後間もなくだろうか、どうやら山寺に女が二人いる。寺には大きな庭があり、女たちが何かしている。他の人の気配はない。(以下引用は、全て 真船豊「佛法僧」日本放送作家協会編『現代日本ラジオドラマ集成』沖積舎、1989 より) きむ子「明子、…

「高天原探題」のレビュー [後編]

本の紹介では「比類なき独創性を放つ闘いと純愛の伝奇SF」とあります。全体としては、男の子ならいつかどこかで一度は体験済みの戦隊ものです。面白いのは、そこに純愛の要素とか、SFとか考古学とか、いろいろとミックスしてあるんです。 高天原探題 (ハヤカ…

「高天原探題」のレビュー[前編]

本の裏表紙には「比類なき独創性を放つ闘いと純愛の伝奇SF」とあります。読書した後だと「その通り!」なんですが、なんのこっちゃですよね。 「独創的」な話なんですが、どこがで聞いた物語のミックス? アレンジ? ただ、この盛り合わせ方は、初体験の鳥肌…

100分de名著 小松左京で取り上げてほしい『宇宙に逝く(そらにゆく)』(1978)のレビュー

「活字を越えてサウンド・ノヴェル」がキャッチコピーストーリーは、戦火のなか、ただひとり宇宙に投げ出された戦闘機パイロットのジョー、救助されるまでコールドスリープで漂流するのだが、強制的に起こされ船外活動が必要になる。死の危険を感じながら、…