G-EXPERIENCE

体験した気にさせる物語ってどうなってるの?

「ジュマンジ」をオーディオドラマでやるなら

ストーリー

 町の名家パリッシュの御曹司アランはいじめられっ子。ある日、建設現場から不思議なゲーム盤を掘り出してしまう。スゴロク型の人生ゲームで、出た文字が現実になって襲ってくる!?
 ガールフレンドのサラとゲームを始めてしまい、アランはゲーム盤に吸い込まれてしまう。走って逃げだすサラ。
 26年後、荒れ果てたパリッシュ家に引っ越してきた2人の子がゲームを再開して…。

 

※ネタバレがあります。ご注意ください。

f:id:irie-gen:20201201114456j:plain 完璧な面白さなのですが、ゆいいつの欠点(たいした欠点でもない)は、時間軸がややこしい点です。

 時間軸は3つあり、さらに1つがパラレル構造になっています。
 1つ目はプロローグ。1869年の少年たちがジュマンジの箱を埋めるシーン。これは冒頭、すぐに終わります。
 2つ目は、1969年。いじめられっ子のアランが吸い込まれ、サラが逃げたシーン。
 3つ目がメイン。アランが吸い込まれてから26年後の世界です。実はこれは2つ目のゲームの世界の延長線上のもの。現実には1969年のまま。

 ですから、物語の中心は「ゲームの世界」ということになります。ですから、多少キャラや設定に無理があっても、言い訳できちゃうんですね。
 エピローグで、2つ目の世界が続いた26年後。現実の世界に、ゲームを一緒に闘った姉弟が、初対面として登場してくれます。

原作では

C.V.オールズバーグ、村上春樹訳『ジュマンジあすなろ書房、2019 を読んでみますと、アランは出てきません。映画の主人公のキャラが原作に無いんです。逃げ出したガールフレンドのサラも当然でません。
 引っ越して来た2人の子がジュマンジというゲームをみつけてプレイするだけ。すべて両親不在の夜に、子どもの間で起こったゲームの世界です。

 カバーにはこんなことが書かれています。

【ご注意!】はじめてゲームをするときは、必ず解説書を、最後まで読みましょう。

 古田足日田畑精一『おしいれのぼうけん』童心社、1974も似た世界かもしれませんね。

親子を描けば深みがます!?

 映画版は、時間軸を少し複雑にしたことで、親子関係にスポットをあてているのがわかります。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように描けるのでしょうか。これは映画の特技なのかもしれません。
 さらに面白いことに、アランにとって怖い父は、ゲーム盤では凶悪なハンターとして登場。常にアランを狙い、撃ちまくり、戦えとせまります。
 ハンターと父親の二役はジョナサン・ハイド氏が好演。映画を見た感想として、父親と対峙する息子の物語、という印象が強く残ります。

4人が素敵な家族にみえちゃう

 メインとなる4人のキャラクターは、素晴らしいの一言です。この4人がリアルな家族に見えてくるから不思議です。もしかすると、全員に欠点があるからでしょうか。
 アランは、失敗をすぐ人のせいにしますし、サラはメンタルが弱すぎる。姉は嘘つきだし、弟は姉以外とは口をききたがりません。
 彼ら4人に共通しているのは、世間との交流が苦手という点でしょうか。そんな彼らが、人生ゲームみたいなジュマンジに挑戦する。

余計な説明はしない

 さらに面白いのは、このジュマンジ、誰がどうやって、何のために作ったゲームなのか一切説明してくれない点です。ゲーム自体も、マス目は無地なのでよくわかりません。ですが、面白そうなんですよね。あれは木箱が持つ魅力でしょうか。
 これを、どうやって音だけのオーディオドラマでできるんでしょうか。2017年にリメイクされたときは、テレビゲームという設定だそうなので、そちらのほうがやりやすいかも。
 もしかして、オーディオドラマって、アナログなイメージがありましたが、デジタルと相性がいいのでしょうか。

 絵本は夜だけの世界でしたが、映画では日中でも不思議なことが続いてしまいます。ルーカスやILMがいれば無敵でしょうが、お金がかかりすぎます。ここはオーディオドラマの出番かもしれませんね。