「字のない絵本」をオーディオドラマに!?(前編)
「字のない絵本」って、オーディオドラマ向きでじゃないですか?
「字のない絵本」を眺めていると、音やセリフが聞こえてきますよね。オーディオドラマも聴いていると、絵が浮かんできます。これって、共通点があるんじゃなかろうか、と。
「字のない絵本」ってなに?
つまり絵だけで、物語が進行する絵本です。音へのアプローチに文字を使いません。絵だけで構成された絵本。
個人的な感覚ですが、オーディオドラマは映画を越えます(20作品中1つ程度ですが)。音だけで越えていきます。そうなったときはもう、とんでもない。もしかすると、絵は各々がイメージするので、自分の物語になるのかもしれません。
オーディオドラマ作品を録音して聞き直すと、初めて聞いたときの体験もセットで思い出します。あのときは、通勤の電車で聞いたなとか、彼女と聞いたなとか、ゆで卵を作っていたな、とか。セピア色の写真をみるようにドラマを楽しめます。
絵本も似てませんか。この絵本が好きだったとき、おじいちゃんがいたなとか、自転車を初めて買ってもらったなとか、レゴに憧れていたな、とか。
つまりオーディオドラマと字のない絵本は、似た感覚で楽しめるものだなぁと。
この共通点に、可能性を感じたわけです。
逆輸入?!
でですね、字のない絵本にセリフをつけて、オーディオドラマ化すれば、面白いんじゃないでしょうか。絵本を知らない人も知っている人も楽しめます。
もちろん双方向にできて、オーディオドラマを聞いて、絵を描くことも可能だと思うんです。ですから、オーディオドラマのセリフにもなり得るんじゃなかろうか、と。
夢は膨らみます。さらに発展して、逆輸入みたいなことになるかもしれません。
字のない絵本を7作品ご紹介
ただ、一口に字のない絵本といっても、多様です。NHKラジオでたとえるならどんな世界かご紹介します。多少、マニアックな紹介方法かもしれません。
そんなラジオなんか知らねぇゾという方には、Amazonのリンクも貼りますので、それでなんとかしてください。
・NHK-FM「青春アドベンチャー」向け
デイヴィッド・ウィーズナー『セクター7』BL出版、2000
課外授業でエンパイア・ステートビルに登った少年。霧の中、雲の子どもと出会い、空に浮かぶ雲製造工場「セクター7」へ連れて行ってもらう。雲たちはどんな形にしようか困っている。少年は得意の画力で魚を描く(さかなクンなみ)。雲たちは喜ぶが、管理している大人たちに捕まり…。
絵を眺めるだけでも楽しくなるファンタジー作品。
ガブリエル・バンサン『アンジュール』BL出版、1986
飼い主に車からいきなり捨てられ、家に帰ろうとする犬のお話。
デッサンのような荒いタッチで描かれるからこそなのか、犬の気持ち、子どもの気持ちが痛いほど伝わる。遠吠えが聞こえる。
…これにセリフはつけられないか。これはこれで完成で、絵に色を塗ってもよくないと思います。
このタッチだからこそ、犬の痩せてゆく背中から、伝わるものがあります。
怖いですけど、青春アドベンチャーで似た体験をしたことがあるので、できるとしたらこの番組だけかと。
↓ネタバレ
ラスト、少年と出会い、おすわりをする犬。カバンを落とす少年。少年が少し近づいてしゃがむ。犬は、ほんのすこしだけ首をかしげる。笑顔で寄ってくる少年。…犬と顔を合わせて、申し訳ない顔になる。犬は立ち上がりもしない。
絶望した顔の少年に、尻尾をふり、クーンと抱きついてくる。
この距離感、犬のぬくもりまで伝わります。こんな音のドラマができたら素晴らしいですね。
次週、後編へつづく