G-EXPERIENCE

体験した気にさせる物語ってどうなってるの?

レオナルド・ディカプリオ主演『シャッター・アイランド』がもはや脳トレな件

 脳トレにもなる謎解きミステリー。
 誰も入れない、出られない。閉ざされた謎の島。
 精神を病んだ犯罪者だけを収容するシャッター・アイランド。鍵のかかった病室から一人の女が消えた。こんなメモを残して。

4の法則
わたしは47
彼らは80
あなたは3
われわれは4
でも
67は誰?

 謎解き物語を、ご一緒にいかがですか。

シャッター アイランド (字幕版)

シャッター アイランド (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

ストーリー 

(※ネタバレはありませんが、大部分が載っています)
 精神を病んだ犯罪者を治療する島で、女性患者が姿を消した。派遣された連邦保安官のテディとチャック。患者の部屋からメモがみつかる。この島は何かがおかしい。話を聴くスタッフたちはぎこちなく、担当医は留守にしているのだ。
 止めて帰ろうとする保安官だが、嵐がきて船がでない。メモの謎がわかりかけたとき、女性患者がみつかる。頭痛で寝込むテディは、殺害された家族の夢をみる。テディの家族を襲った犯人が近くにいる!? 危険な患者を収容した建物へ潜入。
 ロボトミー手術、島の灯台で密かに繰り返されているらしい。そこへテディの相棒チャックが行方不明。灯台につれていかれたのか? 助けにいくテディ。そこで真実を知る…。

 ストーリーを書いてからいうのもなんですが、本筋にとらわれないで、ヒントを拾っていくと謎をとけるかもしれません。

のめり込んでしまう!

 子どもにクイズを出されて、答えが気になるように。つい見てしまう映画です。物語のなかでキャラクターが困っているだけなのに、我が事のように困ってしまいます。
 女性患者の失踪はきっかけにすぎないんです。島自体がなにかおかしいとなって、テディはなぜこの島に来てしまったのか…。
 謎が深くテディの内面におりていくんです。参加型の謎解き映画、まさにオーディオドラマの得意分野かと。

のめり込む仕掛け

 細かい点ですが、武器を没収するシーンにその仕掛けをみることができます。保安官であるはずなのに、ややこしい法律で銃は持ち込めない。そこで預けることになるのですが、相棒のチャックがベルトからホルスターを取り出せない。もたもたしてしまうんです。

 そこで何かおかしいと感じるシーンですが、それだけではありません。丸腰になったという身体感覚がお客に与えられるんです。今から不安なことがあっても逃げられない。島に身を任せるしかない感じになってゆくのです。

これって、グアンタナモじゃね?

 アメリカ合衆国は過激派テロの容疑者をキューバの東南にある米軍基地グアンタナモに収容しています。パンフレットでマーティン・スコセッシのインタビューによると「本土から島の刑務所に移送される感覚というのは、セプテンバー11の後と通じる世界~(略)。不信感や裏切られたという気持ちが渦巻き、モラルというものが全てはぎ取られたような感覚だ。」(*1)と述べています。
 現実とシンクロするからこそ、またのめり込んでしまうのでしょうか。

実は、自分を探している

 島で失踪した女性患者を探しているのですが、物語は入り乱れます。テディの真の目的は、島にいるはずの妻を殺した放火犯を探すことだったのです。

 ですが、ハリケーンの直撃で島から出られなくなり、話を聞いた患者(?)から「あなたは島からでられない。わかっているでしょう?」といわれてしまう。そういえば、事情を聞いた患者さんに「にげて」というメモを渡されてたっけ…。
 閉じ込められてしまったことに気づきます。抜け出そう、あがき、テディの内面に光があたりはじめます。
 小説版の解説に「わたしは、ミステリというものを、個々のプロットはどうあろうと、主人公が自分を探す物語であると考えています。わたしにとって、それが物語の核心です」(*2)とあります。

自分のなかの暴力性

 スコセッシ監督作品に共通するテーマに、自分のもっている暴力性をいかにコントロールするか、があるかと思います。
 人間には暴力性があります。それは、善か悪か。持っている暴力性から逃れることはできません。まわりの状態によっても変化してしまうものだからです。テディの場合、囲まれた小さな島だからこそ、露呈してしまいます。

「~きみは暴力を振るう。非常に暴力的だ。軍隊と警察で訓練されてるから筋金入りだ。きみはこの施設でいちばん危険な患者なんだよ。このまま収容しておくわけにはいかない。だから決定されたー~」(*2、p.408)

 

*1、映画パンフレット『シャッター・アイランド』東宝、2010
*2、デニス・ルヘイン 加賀山卓朗:訳『シャッター・アイランド』ハヤカワ文庫、2006