『ローグ・ワン』はスター・ウォーズの汚点か、傑作か
銀河の平和を脅かす究極兵器デス・スター。その設計図を奪おうとする反乱軍のはぐれ者たち「ローグ・ワン」。『スター・ウォーズ エピソードⅣ/新たなる希望』に直接つながるアナザーストーリー。絶対不可能なミッションに挑む『ミッション・インポッシブル』みたいな作品。
※以下、ネタバレがあります
ストーリー
逃げる少女、父母は必死で匿うが連行される父。彼はデス・スターの設計に必要な技術者だった。
少女(ジン)は成長し、収容所へ移送中に襲われる。混乱に乗じて逃げようとするが反乱軍に捕まってしまう。過激武闘派の中心人物(ジンの育ての親)との、仲介役を頼みたいという。反乱軍のスパイ(キャシアン)とミッションにあたる。
戦闘の末、再会。父からのメッセージ、デス・スターの弱点を知らされる。だが、デス・スターの試運転で育ての親もろとも吹き飛ばされてしまう。設計図が必要になる。
父を救い出そうと潜入するが、死なせてしまう。会議でデス・スターを破壊する設計図を手に入れようと提案するが、反対されてしまう。だが、仲間だけで行くことを決意、コードネームは「ローグ・ワン」。
基地に乗り込み、激戦の末なんとかデス・スターのデータを手に入れるが、みんな死んでしまう。
オープニングに黄色い文字がでてこない!
『スター・ウォーズ エピソードⅣ/新たなる希望』オープニング・クロールにはこうある。
大戦のさなか。
秘密基地を発った反乱軍の宇宙船が、邪悪な銀河帝国に対して初の勝利を収めた。
この戦いの中で、反乱軍のスパイは帝国の究極兵器の秘密設計図を奪うことに成功する。それはデス・スターと呼ばれる、惑星をも破壊するのに十分な威力を備えた、武装宇宙ステーションだった。
これを初めて読んだ感想は「とんでもないことが始まっている!」でも、「どういう意味?」だった。そこを今回映画にしてくれたわけだ。
だが、今回はあの始まり方ではなく、アナザーストーリーでっせ感がすごい。そもそも主軸がちがうのだ。
家族の話
スペースオペラといわれるスター・ウォーズシリーズだが、どれも家族の話である。スカイウォーカー家とその周辺の話ともいえる。なのに、ローグ・ワンの主要キャラにスカイウォーカーは不在だ。
それでもスター・ウォーズを観てる感が強いのは、家族の物語だからだろう。デス・スターを設計した父、父の罪を償おうをする娘。かれらの家族の物語なのだ。
これまでのスター・ウォーズでは、主人公は自分が何者かわからず困惑し、挑戦していく。だが「ローグ・ワン」の主人公ジン・アーソは自分が何者か理解して行動している。
仲間との衝突や問題もあるが、精神的な成長があるわけではない。家族が贖罪する話になっている。
主人公の女の子ジンが悲運すぎる
上記引用のオープニング・クロールでは勝利を収めたとあるが、エピソードⅣにはどのキャラクターも不在である。成功した、と言っているが直接届けた人はいない。
つまり、エピソードⅣを見た人なら、登場するキャラクターの誰が生き残るか判別できてしまう。とくにジン・アーソ、彼女はいなかったはずだ、と。
育ての親とは再会するが、メッセージを受け取ると殺されてしまう。さらに実の親とは再会した刹那に死ぬところを見届けなくてはならない。さらに彼女も若くして死んでしまう。
スター・ウォーズサーガはフォースを中心とした家族を描く、スピンオフはデス・スターを開発してしまった家族の悲劇を描いているのだ。であるから、オーディオドラマとして制作した場合、成功すると予想される。(詳しくはスターウォーズ ストーリー日本語版(1977)のレビュー - オーディオ フィクション アトリエ)
デス・スターの印象がかわる
SWシリーズで人気のエピソードⅣは、帝国が作った最悪の平気デス・スターを破壊する物語だった。
開発に携わったイケメンすぎるゲイレン・アーソ。狂った科学者が開発したわけでもなく、弱点を仕込んでおいてくれたわけだ。そう考えると悪の究極兵器デス・スターは内側に正義を抱えているようにみえる。
ここをズラしたため、全てのエピソードが全くちがう物語にできてしまうから不思議だ。こんなことができてしまうシナリオなのだから、傑作に間違いない。
ちなみに
「ローグ・ワン」とは何か? パイロットが思いつきで言ったようになっているが、『スター・ウォーズ エピソードⅤ/帝国の逆襲』で、ルークが率いる部隊の名前が「ローグ中隊」だった。なにか関係が?!