スコセッシ監督『ディパーテッド』の面白さに迫る(後編)
先に相手を見つけないと自分の命がない! ってだけのリメイク作品なのに、どうしてこんなに面白いの?? あらすじ、リメイクの分類は前編↴
何度もリメイクする理由
実は、本作は日本でもリメイクされてます。どうして似た作品を何度も作るんでしょう。シナリオライターの怠慢?
ネット記事「特定の映画が何度も何度もリメイクされる理由を科学的に分析 - GIGAZINE」海外ニュースサイトのArs Technica を引用しながら以下のように述べてます。
「リメイク作品は、めったに初期のプレテキストに近いものになることはないものの、リメイクされる度により世間に好まれるものになっていく」(*3)
ドラキュラやスパイダーマン、シェークスピア原作で考えると分かりやすいのかもしれないっすね。
「研究によると、プレテキストの影響力は時間と共に指数関数的に衰えていくそうで、その結果、新しいリメイク作品が初期の作品に近いものに戻れなくなってしまっている」(*3)
原作の荒々しさがなくなったぁ~ってやつですかね。原作のファンって、いいますよね「原作はもっと凄かった」って。
「巨大なストーリーネットワークの中で考えると、スタートレックやアベンジャーズなどが、多くに好まれるプレテキストを持った作品であることは明らかで、それ故に続編やリメイク作品が大量に製作される運命である」(*3)
スター・ウォーズやX-MENもそうだろうし、ガンダムも含まれるかもしれないっすね。
骨になる部分
で、ディパーテッド。リメイクされた作品を原作と比較してみて(するんかい)、「尊重したのね」と強く感じる部分がある。キャラクターだ。
シナリオライターのウィリアム・モナハンは、「オリジナルの脚本を読んで特に印象深かったのは、主人公ふたりの二面性。このアメリカ版では、そのふたりの悲劇をテーマにしたんです。偽りの人生がどんな悲劇を招くのか、そこに焦点を当てようと考えました」(*2)と証言している。
マット・デイモンもインタビューで「~主人公のふたりは育った環境こそ違えど、他人のフリをしているっていう点では、ほんとうに似ているよね。」と述べている。もちろん、気高きレオ様も「ふたりのキャラクターはコインの表と裏のような存在」と指摘してらっしゃいます。(*2)
根本的なキャラはそのままに、映画全体のトーンを香港からボストンへ変更した。単純なようで、それってなかなかの発明だと存じます。
暴力を使えば、どっちもどっち?
今から書くことですが、先にお詫び申し上げます。日夜暴力に立ち向かっておられる警察の方、すいません。この映画の主題はそこだと解釈しちゃいました。
チンピラが通りで覆面警官を見分けようとするシーン。目をそらせば警察だと主張するので、歩いている人のほとんどが警察になってしまう。
「あれもサツか?」「あれもサツだ」と冗談を言っている。建物からでてきた仲間で潜入捜査官のレオ様に「サツか?」と、笑いから不意をつくビクビクな場面。
このシーンは、ついに身元がバレそうなスリルを味わうだけじゃないんです。もうひとつ別の意味がありますんです、はい。ここが謝罪ポイントなんですが、警察もギャングも似たもの同士という主張です。私が言ってるんじゃないっすよ。映画がそう言ってる(んじゃないかなあって)。
コインの裏表
上記を補足しますと、レオナルド・ディカプリオもマット・デイモンも似た状況で苦しんでます。実は似たもの同士ですよね。同じ女性を愛した、コインの裏表なんですから。
元ネタになった『インファナルアフェア』では善人になろうとして主題がブレてますけど。マーティン・スコセッシ版はそこが明確っす。一度でも暴力を行使すれば、どちらの側も同じ。そして、道を歩く誰もが暴力を内在している。そういうことじゃないっすか。
ジャック・ニコルソンもいってます「銃と向き合えば、違いはねえ」と。
スコセッシ監督がリメイクすれば、ストーリーはスリリングになった。スリリングに感じるのは、隠れたテーマ性があるから。さらにキャラクターが素敵で、没入できちゃうから。リメイクしても、名作が生まれるわけですね。へへー(頭を垂れた音)。
【参考資料】
*1:マーティン・スコセッシ監督『ディパーテッド』レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、2006製作、初回限定スペシャルディスク付DVD
*2:パンフレット『ディパーテッド』発行:松竹株式会社、2007年1月19日発行
*3:特定の映画が何度も何度もリメイクされる理由を科学的に分析 - GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20160704-why-remake-movies-again/
2016年07月04日