G-EXPERIENCE

体験した気にさせる物語ってどうなってるの?

寺山修司のラジオドラマ 立体叙事詩劇『まんだら』レビュー

あの寺山修司が、ラジオドラマを書いていた! しかも、類例をみない世界観のやつを!! 今回は、順をおって(引用多めで)レビューしてみます。※引用はすべて 寺山修司「まんだら」『現代日本ラジオドラマ集成』沖積舎、1989 より 作品の解説で、寺山修司が…

茂木草介のラジオドラマ『踏切の目』レビュー

ストーリー かつて踏切の遮断機を動かし、交通指導をする仕事(踏切警手)があった。主人公の村木重兵衛はそのひとり。ある日、重兵衛の踏切で事故がおこる。 一人が車に跳ねられ死亡、列車と車もぶつかった。警察署は喧々囂々。踏切が降りてから車が侵入し…

映画「南極料理人」をオーディオドラマにするなら

オジサンたちの本気ほど清々しくアホなものはない…。映画と原作本(*)を読んだ感想です。 仕方なく行くことになった南極ドーム基地。そこはウイルスさえ生きられない南極の奥地。富士山よりも高い標高。そんな場所にオジサンだけで一年以上の同居生活。 と…

NHKテレビドラマ『岸辺露伴は動かない』第二話「くしゃがら」をくしゃがらってみた

※ネタバレがあります。 荒木飛呂彦の漫画で、風変わりな脇役が言いそうな台詞です。森山未來さんの演技や身体の動かし方、すべてにジョジョを感じます。ぜひ「味もみておこう」(露伴っぽく)。 「いやいやいや、なんつーの? そりゃ、わかるよ? うん……わか…

「ワンダー 君は太陽」をオーディオドラマにするなら

※注意:ネタバレがあります ワンダー 君は太陽(吹替版) 発売日: 2018/10/10 メディア: Prime Video ストーリー 病気で顔が変形したオギー(10才)は、引きこもっていたが学校へ。友達もできるが、いじめられる。オギーの姉も進級にともない親友を無くし、へ…

映画「ノア 約束の舟」をオーディオドラマ化するなら

まさか「ノアの方舟」をみて、『シャイニング』を思い出すとは思わなかったです。 ラッセル・クロウの暴力性、アンソニー・ホプキンスのレクター博士っぷり、ただただ怖い(アンソニー・ホプキンスは何もしないけど)。 俳優の魅力はもちろん、大雨や洪水の…

感動のオーディオドラマは「冬」が似合う

ゴールデンカムイ「阿仁根っ子」はどうして泣けるのか 『ゴールデンカムイ』というお宝争奪マンガがあります。主人公は不死身の杉本と異名をとる熱い男です。彼とアシリパさんという少女の旅を描いた物語…なのですが、今回の主役は谷垣源次郎さん。秋田のマ…

ヒッチコック映画の真髄『汚名』をオーディオドラマ化するなら?

※ネタバレがあります。ご注意ください。 ストーリー 父がスパイの罪で捕まった、警察や記者に追われる娘のアリシア。彼女は内輪のパーティで出会った男デブリンを気に入りドライブするが、実は政府の情報部員(FBI?)だった。極秘捜査に協力してくれという…

「字のない絵本」をオーディオドラマに!?(後編)

字のない絵本は、オーディオドラマ向きでは? 文字情報がないために、能動的に空想する。それは体験となる? これは、オーディオドラマと共通では?? 字のない絵本を7作品ご紹介(前編で2作紹介済) ・NHK-FM「FMシアター」向け ショーン・タン『アライバ…

「字のない絵本」をオーディオドラマに!?(前編)

「字のない絵本」って、オーディオドラマ向きでじゃないですか? 「字のない絵本」を眺めていると、音やセリフが聞こえてきますよね。オーディオドラマも聴いていると、絵が浮かんできます。これって、共通点があるんじゃなかろうか、と。 ブレーメンの音楽…

谷川俊太郎のラジオドラマ「十円玉」(1963)をレビュー

あの谷川俊太郎が、ラジオドラマを書いていた! 聞いたあとの気分は、村上春樹のエッセイを読み終わった感じと似ています(粗筋だけでも楽しめます)。ラジオの面白さや、最近話題の音声SNSについても考えます。 …五円玉なんですけどね ストーリー 都市の雑…

「オール・ユー・ニード・イズ・キル」をオーディオドラマ化するなら

※ネタバレがあります。ご注意ください。 ストーリー 宇宙人が攻めてきた。広報担当の将校なのに前線に送られてしまう主人公。装備をつけるが、セーフティロック解除の方法もわからない。やけくそになり敵を巻き込んで自爆、前線に送られた日に戻ってしまう。…

「ゲーム・オブ・スローンズ」はなぜ面白い? オーディオドラマ化できる?!

※ご注意ください。第1章第1話だけですが、ネタバレがあります。 無駄のない第1話のストーリー 北方の刑場、城主(エダード)自らが脱走者の死刑を行う。王の一行が来ると知らせをうける。王とエダードは古くからの友人で、王はエダードの妹と結婚する予定…

江戸落語「鰍沢」をオーディオドラマ化するなら

ストーリー 江戸からの旅人、雪道で迷ってしまう。人家にたどり着くと、美人な奥さんに見覚えが。かつて心中したと噂のあった花魁だ。飲めない旅人は卵酒を少しいただき、次の間で眠る。旦那のために奥さんは、酒を買いにでる。 帰ってきた旦那、冷えた卵酒…

落語「地獄八景亡者戯」をオーディオドラマでやるなら

ストーリー サバを食べて死んでしまった男。近所のご隠居と一緒に閻魔大王の裁きをうけにいく。あの世を見物しつつ、茶店で三途の川の越え方を教わり、船出をするところで前編が終わる。 後編は、六道の辻から、閻魔大王の前へ。四名だけが地獄へ回される。…

古典落語「うどん屋」をオーディオドラマにするなら

ストーリー 寒空に夜鳴きうどんを売るおじさん。結婚式帰りの酔っぱらいに絡まれ、商売にならない。別の場所へいくと呼び声がうるさいと注意されたり、さんざんな目にあうお話。(以下参考:CD 十代目柳家小三治「初天神、うどん屋」1979年 キングレコード:…

映画「ビーン」をオーディオドラマにするのは、不可能か?!

ストーリー イギリスの美術館で警備員として働くMrビーン。なぜか博士としてアメリカへ行くことになり、名画の講演まですることに。作品を台無しにしたり、遊園地で絶叫マシーンのリミッターをいじったり、病院で手術したりの騒動を起こす。 ※注意:以下ネタ…

ヒッチコック「救命艇」をオーディオドラマでやるなら

ストーリー ドイツUボートに沈められ、命からがら救命艇に乗り込む一般市民たち。そこへ敵のドイツ兵が流されてきて救うことに。コンパスがないため、ドイツ兵に頼るしかなく憤る人たち。だが、元医師だったというドイツ兵に外科手術も頼むことになってしま…

「ジュマンジ」をオーディオドラマでやるなら

ストーリー 町の名家パリッシュの御曹司アランはいじめられっ子。ある日、建設現場から不思議なゲーム盤を掘り出してしまう。スゴロク型の人生ゲームで、出た文字が現実になって襲ってくる!? ガールフレンドのサラとゲームを始めてしまい、アランはゲーム…

「トータル・リコール」をオーディオドラマでやるなら

※ネタバレがあります。ご注意ください。 玄田哲章、シュワと一緒に生きてこられたのは光栄の至り/映画『トータル・リコール』玄田哲章コメント ストーリー 妻が嫌がるのでバーチャルで火星旅行へ行こうとする主人公。だが、すでに行ったことがあるらしい。…

アナログ人間、スマートスピーカーを買う?!

電気店に並ぶスマートスピーカーの形の変化に私は確信した「いつか買うな」と。それなら調査し、熟考してから実際に買ってみようと。このブログはその記録である。 アロマとスピーカーの関係性 電気店でスマートスピーカーを見た第一印象は「アロマはじめた…

西澤實「タイタニックの悲劇」のレビュー

1912年わが明治45年4月北大西洋に沈みまして、死者1503名という空前の惨事を海難史上にとどめました巨船タイタニック遭難を取上げました、西澤實、作並びに構成『タイタニックの悲劇』。 ※記事内の引用部分は全て、西澤實「タイタニックの悲劇」『現代日本ラ…

朗読のオーディオブックなら、マイナー俳優さん最強説

おさない頃の楽しみは、寝る前に読んでもらう本の時間だった。 なかでもお気に入りは繰り返しくりかえし、その世界に浸って眠る。「もう、好きな本を買ってあげるから、別のにして」と頼まれた覚えがある。 あの頃の両親とわたしに教えてやりたい、オーディ…

コロナウイルスと宇宙人襲来の相似点

新型コロナウイルスの感染拡大による世界的なパニック。それは「まるでSF映画だ」などと指摘される。ウイルスが蔓延する世界を描いた映画のことを指しているのだろう。だが、宇宙人が襲来する映画にも似た部分がある。 スピルバーグ監督『宇宙戦争』主演トム…

阿木翁助『夜の河』レビュー

脚本を読んだだけでアガサ・クリスティ並に面白い。 阿木翁助『夜の河』の見事さは、構成からもわかる。物語を追う形でレビューしてみたい。(※引用はすべて、阿木翁助「夜の河」『現代日本ラジオドラマ集成』沖積舎、1989) 1、「西山さんの話」 夜中に事件…

飯沢匡「数寄屋橋の蜃気楼」レビューっぽいエッセイみたいな

エッセイみたいな 町で警察官に声をかけられた。「もしもし君はそこで何をしてるんですか」 初めてだ、こんなふうに声をかけられたのは。公道の脇で何をしているのか、即答できない状態にいた。「困りますね。今このお嬢さんが訴えられたんですがね」 「君は…

原作小説「恩讐の彼方に」、戯曲「敵討以上」冒頭を比較

「原作を読んでおくべき」という人間を私は信用しない。「あの映画、原作を読んでからじゃないと、絶対に面白さが伝わらないよ」なんていう人。どんな美人でも、ウソつきに見えてしまう。 画像はイメージです 何の話かというと「原作は最高か」問題である。…

菊池寛「恩讐の彼方に」のレビュー

突然ですが、外出自粛中にパチンコ店に行く人、どう思いますか? 許せないと思った方、「自粛警察」や「コロナ自警団」をご存知ですか。県外の車や、営業を続ける店に嫌がらせをするんだとか。 様々な意見があると思います。本当の心情はどうなんでしょう。…

真船豊「佛法僧」のレビュー

ストーリー 戦後間もなくだろうか、どうやら山寺に女が二人いる。寺には大きな庭があり、女たちが何かしている。他の人の気配はない。(以下引用は、全て 真船豊「佛法僧」日本放送作家協会編『現代日本ラジオドラマ集成』沖積舎、1989 より) きむ子「明子、…

『音声に未来はあるか?』のレビュー

「OK, Google!」って、恥ずかしく言えない 「オッケー」って小学生くらいの時は常用してましたけど、…最近いいますか? 「いいよ」「わかった」「ああ」くらいですよね。「ねえ、Google」というのもできるそうですが、しっくりきません。 「Siri」も初め喜…