G-EXPERIENCE

体験した気にさせる物語ってどうなってるの?

シナリオを変えてはいけない? 『ラヂオの時間』から学ぶシナリオ術?

シナリオライターの方への質問でよくみるのが「筋を変えられたことはありますか?」だ。それに対する答えの多くは「ありますけど、変えてもらっていいんですよ」というもの。 どうしてそんな質問が生まれるのか。それはこの映画の影響ではないかと邪推してし…

「羽州ぼろ鳶組 菩薩花」が最高に燃える理由をさぐる (後編)

先週の続きです。 燃えるポイントを原作小説とオーディオドラマから比較しています。 (参考資料は、文末にあります) 菩薩花 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 作者:今村翔吾 祥伝社 Amazon 思わず立ち上がってしまうシーン ・オーディオドラマ版 8回(*2) 産気づ…

「羽州ぼろ鳶組 菩薩花」が最高に燃える理由をさぐる (前編)

今回は「ぼろ鳶組」を取り上げます! ※ネタバレ満載ですので、気をつけてください。 中国の「水滸伝」、アメリカの「アベンジャーズ」、そして日本は「#羽州ぼろ鳶組」だ!!『#菩薩花 羽州ぼろ鳶組』最高に面白いっす。毎晩燃えてます。ありがとうNHK! htt…

FMシアター『夫婦円満』を分析 (平成12年度文化庁芸術祭参加作品)

熟年夫婦の離婚危機を描いたラジオドラマ。とんでもない二人のお芝居! (ちょい役で、おかけんた氏もでてますが) 夫役が八月に亡くなられた笑福亭仁鶴師匠! 妻役は市原悦子!!(市原さんも2019年に亡くなられたんですよね)。本作は手持ちの録音だが、21年前…

「ノートルダムの鐘」はどうして面白い? フロローの魅力とは

ディズニーは実写版『ノートルダムの鐘』を制作中なのだとか。幾度となく映画化、アニメ化された『ノートル=ダム・ド・パリ』。正直な話、ストーリーだけ追いかけると、何が面白いのかイマイチわかりません。なのに人気がある。わたしも、あの世界に惹きつけ…

「英国王のスピーチ」は冒険物語?!

※ネタバレがあります ※参考資料は文末に 英国王のスピーチ (字幕版) コリン・ファース Amazon あらすじ 王族の弟(ジョージ)がつっかえながらスピーチをしている。有名なドクターの特訓をうけるもうまくいかない。彼は吃音に悩まされ短気で内気でもあった。妻…

なぜ鬼を殺してはいけないのか?「桃太郎」裁判『昔話法廷』より

走行中の列車で放火、何十人もケガさせようが、私たちにはリアリティがない。「京アニ事件」以来、ガソリンを販売する際には身分証の提示を求める法律ができた。模倣犯を防ごうとしても、ライターオイルが使われてしまう。 犯罪を防ぐには限界がある。 それ…

清水邦夫に学ぶ自伝ドラマの作り方『海へ…』

ヘミングウェイって、どんな印象がありますか? アメリカのノーベル文学賞作家で、猟銃を持って日に焼け、ひげを生やしているおじさん。そんなイメージですか? 10月のEテレ「100分de名著」で取り上げられたヘミングウェイの「老人と海」。そのスピンオ…

脚本・宮崎駿「天空の城ラピュタ」シャルルのリストラ問題を考察

※ネタバレがあります *参考資料は文末を参照 『天空の城ラピュタ』のクライマックス、パズーとシータで暗いラピュタの中を走りまわりますよね。あれ、実は準備稿の段階では、シータではなくシャルルと行く予定だったことをご存知ですか。 シャルルとは、も…

青春アドベンチャーの傑作「人工心臓」を分析

江戸川乱歩を見出し、日本初の純SF小説『人工心臓』(大正15年発表)を書いた小酒井不木(こさかいふぼく)。失礼ながら、聞かないお名前ですよね。 彼の書いた小説世界を舞台にした奇妙なラジオドラマ、青春アドベンチャー傑作回の分析です。 人工心臓 作者…

ヒッチコック『サイコ』に仕掛けられた音のドラマ ~後編~

映画に声のドラマ?! 映画『サイコ』には、オーディオドラマのように声だけでドラマを展開させるシーンが複数ある。どうしてそのようなシーンがあるのか。実際に引用しながら検証していきたい。 サイコ (字幕版) アンソニー・パーキンス Amazon 車内でつい…

ヒッチコック『サイコ』に仕掛けられた音のドラマ ~前編~

映画史に残るシャワーシーン、ヒッチコックはいう、 「あのシーンの撮影には七日間かかった。キャメラの位置も七〇回変えた。たった四十五秒のシーンのためにね。」(*1) 純粋に面白い映画を作るため。テーマとか、演技とか、原作の面白さとか、そんなも…

映画『ジュラシック・パーク』を分析、『ロスト・ワールド』なの?

『ジュラシック・パーク』の原作者マイクル・クライトン。彼はいかに着想をえたのでしょうか。インタビューが、パンフレットに掲載されています。 〈*参考文献リストは1番下にあります〉 「~わたしは彼が恐竜の世界を描いた『ロストワールド・失われた世界…

ロバート・デ・ニーロ主演『ミッドナイト・ラン』を分析

「追いかけっこ」がベスト デ・ニーロ自身が「1番好きな作品」と惚れ込んでいるシンプルな名作です。マーチン・ブレスト監督、ロバート・デ・ニーロ主演の『ミッドナイト・ラン』(1988)。 ミッドナイトラン [DVD] ロバート・デ・ニーロ Amazon ざっくり内…

竹内日出男のラジオドラマ『流れて遠き』を分析

竹内 日出男 氏は、「中学生日記」などのシナリオ執筆で有名。また、東大卒のエリートで、長年(協)日本脚本家連盟と(社)日本放送作家協会の理事を歴任された、とにかく偉大な先生らしいです(Wikipediaによると)。 牡丹の花 テーマは介護 今回の物語『…

TBS系ドラマ「カルテット」第1話をしゃぶってみた

難しくはないのですが、わかりやすいドラマではありません。ほろ苦い若者たちを描いたドラマというんでしょうか。あ~でも、それだけじゃないんです。坂元裕二さんが書くシナリオは、立体パズルのようにスコッとハマっては、抜けていきます(抜けたピースは…

大林清のラジオドラマ『竜馬を斬った男』を分析

どうしてタイトルにネタバレを書くんでしょうか。たまにありますよね「粛清」や「新王誕生」、「砕かれし者」など(『ゲーム・オブ・スローンズ』より)。いやそりゃ、殺されるわな、王も生まれるわな、と。 本作も竜馬を斬った男がいるわけですよね。実質三…

宮本輝『五千回の生死』の朗読

「ラジオ文芸館」をご存知ですか。『ラジオ深夜便』のなかの一つのコーナーです。そもそも「ラジオ深夜便」とは、NHKのラジオで毎日(年中無休!)、夜中から朝方まで放送している(しかも生放送)、眠れない夜にピッタリな番組です。 www.nhk.or.jp 日曜の深…

最近のFMシアターで1番の名作『ワンさんは働き者』

「FMシアター」をご存知だろうか。音声で体験する映画と言ったところだ。NHK-FMで土曜夜10時~50分間放送されている。 たまに映画を超える体験をさせてくれる超名作が現れる。残念なのは、一週間の聞き逃し配信のあとは、この世から消えてしまうことだ。もっ…

高垣葵のラジオドラマ『エウ・ソウ・ジャポネーズ ――私は、日本人』を分析

絶望的なまでの方向オンチだ。ナビの指示通りに走っているつもりが、出鼻でそっちじゃないと再設定されてしまう。 だからかもしれない。旅をする物語、とくにバディものがすきだ。一人旅は観てるだけで不安になる。今回はそんな安心のバディものをご紹介。 …

傑物声優による『ジョーカー・ゲーム』の謎にせまる

ドラマCDの出演者は傑物ばかり 『ミッション・インポッシブル』イーサン・ハント(森川智之)に、『進撃の巨人』エレン・イェーガー(梶裕貴)、『ONE PIECE』ロロノア・ゾロ(中井和哉)、そして『フルハウス』ジェシーおいたん(堀内賢雄)! 『鬼滅の刃』…

モリはどこに? 映画『モリのいる場所』より

昭和天皇は熊谷守一の絵をご覧になって、「これは何歳の子どもの描いた絵ですか?」と尋ねられたという。 モリのいる場所 [DVD] バンダイナムコアーツ Amazon ストーリー 庭。おじいさん(モリ)が杖をついて歩き、地面に這いつくばりアリを凝視する。茶の間…

聞けばお化けがでる『質屋蔵』の秘密

「日本の夏」といえば怪談話だ。だが、驚くことに日本人は外国人に比べて、怖がりな遺伝子が多いらしい。脳科学者がいうには、災害大国だからだとか何とか…。 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」なんて言葉が生まれたのも、ビビりだから? そんな夏にぴったりな落…

『鋼の錬金術師 Vol.1砂礫の大地』コミックCDがイマイチな理由を分析

漫画「鋼の錬金術師」は、小説やアニメ、実写映画化もされた超人気作。じつは、ドラマCDも豊富だ。 主人公エドの声は、朴璐美(パク ロミ)さんが有名だ。朴さんが出演されたドラマCDもあるが、あえて皆川純子さん出演の初期作品(不評)を分析してみた。 CD…

ラジオドラマ『シュナの旅』はイマイチか?

ラジオドラマ『シュナの旅』の原案はあの宮崎駿!(『風の谷のナウシカ』から2年後の放送)ラジオドラマ史にのこる事件、なんと世界初の「サラウンド・ラジオドラマ」なのだ。 シュナの旅 (アニメージュ文庫) 作者:宮崎 駿 Tokuma Shoten/Tsai Fong Books A…

『ローグ・ワン』はスター・ウォーズの汚点か、傑作か

銀河の平和を脅かす究極兵器デス・スター。その設計図を奪おうとする反乱軍のはぐれ者たち「ローグ・ワン」。『スター・ウォーズ エピソードⅣ/新たなる希望』に直接つながるアナザーストーリー。絶対不可能なミッションに挑む『ミッション・インポッシブル…

三浦しをん作品の朗読はつまらない?! 『むかしのはなし』「たどりつくまで」から

三浦しをんを語るなら直木賞を獲った『まほろ駅前多田便利軒』や、デビュー作、映画化された作品、シリーズ化された作品などに言及すべきですよね。それは専門家に任せます。 わたしが面白いのは『むかしのはなし』です。三ヶ月後、隕石がぶつかり人類は滅び…

レオナルド・ディカプリオ主演『シャッター・アイランド』がもはや脳トレな件

脳トレにもなる謎解きミステリー。 誰も入れない、出られない。閉ざされた謎の島。 精神を病んだ犯罪者だけを収容するシャッター・アイランド。鍵のかかった病室から一人の女が消えた。こんなメモを残して。 4の法則わたしは47彼らは80あなたは3われわ…

「藤沢朗読劇」が面白いのはどうしてか?

「藤沢朗読劇」という、もはやジャンルがあります。 どんなものか? わたしの勝手なイメージでいいますと、元・歌舞伎役者さんが「少年ジャンプ」にあてて書きました! みたいな話だよ…。って、どんなだよ! (大変失礼ながら)今回は「Relic ~tale of the …

ネットで「朗読」を体験してみた

インターネットを利用して、無料の朗読を体験してみました。アナウンサーさんや声優さんによる、文芸作品の朗読です。 文芸作品、なかでも文豪クラスの作品を読めば、人生のプラスになるかも。その気になれば図書館や、青空文庫で簡単に読むことができます。…